喜多文庫民俗芸能写真データベースについて

奈良春日神社(写真)

この資料は、日本各地で民俗芸能の詳細なフィールドワークをおこなった喜多慶治氏による写真データを公開するものである。

喜多慶治氏の民俗学関係資料は、1992年に本学図書館に寄贈され、喜多文庫と名づけられた。その内容は、全国各地の芸能を撮影したスライド9,381点、カラーネガ11,939点と白黒ネガ28,700点、現像された写真、喜多氏による調査記録のノート等から成る。そのうちスライド全点について、撮影日時、撮影場所を付して、このデータベースで公開している。今後、カラーネガ・白黒ネガ、現像写真についても整理が済んだ順に公開していく予定である。

これら資料は、喜多氏自身が、昭和30〜40年代を中心に、日本全国を実地調査した際の調査資料であり、現在では廃絶もしくは変形した行事・芸能も多く記録されている。失われた芸能の姿を知るうえで、また高度成長期をはさむ日本列島の文化の大きな変動を捉えていくうえで、大変貴重なデータであり、各方面からの利用を期待したい。

喜多慶治氏(1901〜1992)について

伊勢ノ森八幡神社(写真)

明治34年(1901年)生まれ。東京商科大学(現 一橋大学)卒業後、実業界に入る。会社の第一線を退いてから、民俗学の方面に情熱を注ぎ、各地に民俗芸能をつぶさに見てまわった。

このような公開が可能になったのも、喜多氏が撮影日時、撮影場所等のデータを明記して、きわめて整然とした形で整理をおこなっていたからである。フィールドワークの兵庫県に関する成果は、『兵庫県民俗芸能誌』(錦正社、1977年)に集約されている。千頁近い大著に収録された兵庫県各地の民俗芸能は、すべて喜多氏が実際に足を運んで実態調査をおこなったものであり、きわめて資料価値の高いものとして学界で評価されている。

また、喜多氏の足跡は兵庫県にとどまらず、全国各地に及んでいる。今後、神戸女子大学で、写真資料とフィールドノート、そして現在の伝承を突き合わせる作業を進めることによって、その仕事の価値はますます明らかになってくるものと思われる。